2004年10月28日
ボロット・バイルシェフにアルタイ政府は「国民栄誉歌手」の称号を送りました。
すでに名実ともにアルタイを代表する歌手だったボロットにとって
遅すぎるともいえる受賞です。
■ボロット・バイルシェフ 1962年2月20日ウスチカン地区クルルク村生まれ。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地にいた兵役時代に書いた「我が故郷クルルク」が大ヒット、一躍アルタイ共和国のスター歌手となる。バンドでの活動に伝統楽器やカイなどの伝統唱法を取り入れ独自の世界を築く。1992年、カザフスタンで開催された国際ポピュラー音楽コンテスト「Voice of Asia」で入賞。1994年にはハカス共和国アバカンでのコンテストでグランプリを獲得。その後ウェザー・リポートのジョー・ザヴィヌルとの共演をはじめ、ヨーロッパを中心に世界各国で演奏活動を展開する。2000年と2001年には巻上公一の招聘により来日。ソロアルバム『アルタイのカイ 秘密の夢〜英雄叙事詩の世界』(巻上公一プロデュース、キング・レコード)では、トプシュールや縦笛ショール、口琴コムスといった伝統楽器と高低多種多様な生の声を使って、伝統を踏まえつつもそれを乗り越えた音楽世界を作りあげる。 2003年 田口ランディと巻上公一のプロデュースで文京シビックホールを満員にする。多くのファンを魅了した。 |
「カイ」とボロット・バイルシェフ/英雄叙事詩「Ochi-Bala」 |
「カイ」は、 「アジアの真珠」との賞される山深い未知の国「アルタイ」のシャーマンによって歌い継がれてきた、モンゴルの「ホーミー」やトゥバ共和国の「ホーメイ」に通じる歌唱法。長くアルタイの英雄叙事詩を伝え、そして今、ボロット・バイシェルフという偉大な歌い手を得て、新しい声の芸術として世界的に注目を集めています。
今回は、 トッパンホールというクラシックホールを公演場所に選びました。 第一部は、 マイクなしの全くの生でボロットソロを深く堪能していただきます。 そして、 2002年夏、遠くアルタイを訪ねその土地の力と喉歌の魅力に見せられた作家・田口ランディ氏とアルタイを舞台にした実話物語『ペロボディアの輪』の翻訳者 菅靖彦氏とのトーク。 ボロットをまじえて神秘の国アルタイの深部に迫ります。 後半は、アルタイ文化と喉歌に造詣の深いアーティスト 巻上公一氏と、パーカッショニスト佐藤正治氏、そしてボロットによる高感度セッションをお贈りします。
2000年の長きにわたって歌い継がれてきたアルタイの英雄叙事詩には、神話や伝説的なエピソードはもちろんのこと、アルタイ人の宇宙観、世界観、宗教観が詰め込まれています。長大なものでは全部歌いきるのに七日七晩かかるとさえいわれる叙事詩を、歌い手たちはすべて暗誦で歌いきります。文字や記録ではなく、「口から耳へ」と口伝で伝えられる情報の豊かさ、大切さを古代のアルタイ人は知っていたのです。ボロット氏の「声」は、2000年の時の流れを越えて、シベリアの地に生きた悠久のアルタイ人の智恵とこころを伝える、まさにタイムマシンなのです。 |
アルタイの2大英雄叙事詩のひとつ「Ochi-Bala」は、アルタイに生きた一人の、強く美しいプリンセスについての伝説である。彼女の生れは伝説的で、両親は山と岩だった。彼女はたくさんの人々の住む広大な土地Ochi-Balaを持ち、強い軍隊と素晴らしい家と家畜を持っていた。また、彼女の姉は未来を見通す目を持っていた。叙事詩の中で描かれている有名な闘争は、地面の下の暗黒世界の人々を率いたKan-Taadyi-BeiとOchi-Balaの戦いである。Kan-Taadyi-Beiと彼の兵隊たちはOchi-Balaの人々を征服した。しかし、彼女の強さと賢さと、女性的な魅力と惑わせる才能とで彼女は勝利し、土地の人々を解放した。最後の最後の勝利の後には、彼女は星になってしまうのだが、その星はいまでも、彼女の魅力そのままにアルタイの空で輝いている。 |
■歌唱法 カイ 下の三つのスタイルを組み合わせた、 |